パリパラリンピックの今回の大会では、フランスのスタートアップ企業によるイノベーション技術を使って障害のある観客にも会場で楽しんでもらうことに力を入れていた。視覚障害のある選手が互いにボールを投げ合うゴールボール。ボールに仕込まれた鈴の音を頼りにゴールを守り得点を競う。この日、フランス不代表を応援しようと競技会場を訪れたのは、フランス人のカップルのニコラさんとドロテさんだ。2人とも全盲の視覚障害者だ。スポーツが大好きな2人だが、これまで競技会場を訪れることはほとんどなかった。試合経過がわからないので周囲と一緒に盛り上がることができないためだからだ。そんな2人が初めて手にしたのが「ビジョンパッド」だ。試合のボールの動きに合わせて会場内のスタッフがタブレットにボールの位置をペンで入力。するとインターネットでつながった端末のボールも動き試合の様子を伝えるのだ。フランスのスタートアップ企業 が開発して、今回初めて大会に導入された。楽しみにしていたアメリカ戦。初めて端末を手に選手を応援した。 後半、フランスがアメリカを追い上げる4点目を取ると会場と一体に。こうした障害者向けのサービスを提供するスタートアップ企業の展示会が、パラリンピックに合わせて開かれた。注目された分野のひとつが、障害者の移動の支援だ。こちらは車いすを電動化して楽に移動できるようにする技術だ。歴史のあるパリの街は古い石畳や、段差が多く障害のある人たちの移動は長年の課題だ。こちらの企業が提供しているのは移動をサポートするアプリだ。始めに障害の種類などを入力。車いすの場合、エレベーターのあるルートなど通行可能な経路を案内してくれる。現在、国内およそ50の施設で使えるほか、公共交通機関でも実証実験を行っているということだ。展示会を主催したパリ市の担当者は、”パラリンピックを機にフランスの障害者向けのスタートアップの技術を社会により普及させたい”と考えている。フランスでは今回のパリ大会をきっかけに社会のバリアフリー化を加速させようという取り組みが広がったということだ。