トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談の後、ヨーロッパの首脳も加わるという異例の1日となった。先週アラスカで行われた米露首脳会談の後、トランプ氏がロシア寄りに急速に軸足を移そうとしていただけに、この土壇場の状況でなんとかトランプ氏を引きとめようと、どの首脳もトランプ氏を称賛して機嫌を害さないようにしながら、結束して臨んだと思う。ウクライナの「安全の保証」をめぐっては詳細は来週議論されるということだが、トランプ氏が従来の方針を転換して安全の保証で関与を明言したことは一歩前進だったと思う。欧米のメディアからは、「ヨーロッパのリーダーに傲慢さは見られず、目的意識を持って団結した。マクロン大統領からメローニ首相まで党派、イデオロギーを超えた驚くべき団結を示した」と、結束ぶりに評価が上がる一方で、「多くの人が懸念していたよりはうまくいった。しかしどこに向かうのか見通せる人はほとんどいない。前向きな雰囲気だが中身は乏しい」という厳しい指摘もあった。焦点の1つだった領土の問題については、ゼレンスキー氏自身、トランプ氏と長時間議論したと述べているが、この会談の中身についてはまだよく分かっていない。トランプ氏もきのうまではSNSなどで「戦争を続けるも終わらせるもゼレンスキー氏次第だ」と譲歩を促していたが、きょうはメディアの前では土地の交換について議論をする必要があると述べただけだった。ただ、会談に同席したルビオ国務長官は終了後、FOXニュースのインタビューで「戦争を終わらせるためには互いが譲り合わなくてはならない」と改めて強調した。アメリカが「安全の保証」を提供する代わりに、ゼレンスキー氏に譲歩を求めたものとみられるが、この点が今後の最大のポイントになってくると思う。トランプ氏は記者団との日々のやり取りの中で、最近では口を開けば必ず「自分ほど海外の紛争を数多く調停してきた大統領はいない」などとアピールをして、ノーベル平和賞への野心も隠してはいない。ただウクライナでの戦争の仲介をめぐっては「一番簡単かと思っていたが実は一番難しかった」と改めて述べていて、世界や国民が注目している以上、この問題に早期に結果を出したいという思い、あるいは焦りがあると思う。特に先週の米露首脳会談でプーチン氏に屈したなどと報道されているのが相当悔しいようで、きょうもSNSでメディアを批判し、「自分は必ずやり遂げる」と息巻いている。
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