2025年8月2日放送 4:15 - 5:00 NHK総合

国際報道
2025

出演者
辻浩平 藤重博貴 酒井美帆 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像とともにキャスターらが挨拶。

ラインナップ

「東南アジア戦後80年」、「トランプ大統領大統領令署名」などのラインナップを伝えた。

(ニュース)
新たな関税措置の大統領令に署名

トランプ大統領は先月31日、日本を含む各国や地域への新たな関税率を定める大統領令に署名した。日本への関税率は15%と先週合意した内容となっていて、新たな関税措置は日本時間の8月7日の午後1時すぎに発動するとしている。それまでは現在課されている一律10%の関税率が引き続き適用される。武力衝突が起きたタイとカンボジアに対する関税率について、停戦が発効したのを受けて両国からの輸入品への関税を36%から19%に引き下げると発表した。カナダについてはすでにカナダからの輸入品に対し原則25%の関税をかける措置を発動しているが、8月1日より35%に引き上げるとしている。メキシコについてはトランプ大統領はSNSで“シェインバウム大統領と電話会談を行った”としたうえで、“現在あるディールを90日間延長することで合意した”として“原則25%の関税率を据え置きつつ協議を続ける”という。

米 中東担当特使 ガザ地区訪問

イスラエルのメディアは1日、“アメリカのウィトコフ中東担当特使がガザ地区にある食料の配給場所を訪れた”と報じた。ガザ地区をめぐっては、国連機関が“食料不足の程度が最も深刻な「飢きん」が差し迫っている”と指摘しているほか、トランプ大統領も“子どもたちは本当の飢餓状態だ”と述べ、関与を強める姿勢を示していた。ウィトコフ特使の訪問の目的について、ホワイトハウスの報道官は支援物資の配布の現状を確認するほか住民から直接話を聞くとしていて、人道状況の改善につながるか注目される。ハマス側はSNSへの投稿で“訪問は住民を飢えさせているアメリカとイスラエルに対する怒りを封じ込めるためのプロパガンダた”と批判。ハマスは先月31日に発表した声明で“人道危機と飢きんが解消されれば停戦交渉を再開する用意がある”としている。

東南アジアから見た戦後80年
スタジオトーク

戦後80年をテーマに考えていく。第二次世界大戦の終結から今年で80年。しかしウクライナや中東など、今も世界各地で戦闘や紛争が続いている。順天堂大学特任教授・藤原帰一が解説する。どんなことについて知りたいか、「あの戦争における日本に対する印象や考え、東南アジアの方々の思っていることを知りたい」など視聴者からの声を紹介。1941年に始まった太平洋戦争。ベトナムの公立中学校で使われている歴史と地理の教科書を紹介した。太平洋戦争中に起きた飢きんについての記述がある。

東南アジアから見た戦後80年 ベトナム

ベトナムの首都・ハノイの中心部から車で15分。かつて集団墓地だった場所に当時の悲劇を記そうと、地元の有志が慰霊碑を建てた。旧日本軍はフランス領インドシナに進駐。天然資源に加え、“コメの確保も重視”されていたとみられる。ベトナム北部では1945年ごろ、天候不順でコメの収穫が激減。現地は飢きんに見舞われた。ベトナム政府は“日本が米の拠出を求め続けたこともあって200万人以上が餓死した”としている。チャン・バン・ノイは当時の状況を今も鮮明に記憶している。東京大学名誉教授・古田元夫は、日本であまり知られていない飢きんについて日本人も知ってほしいという。

スタジオトーク

ベトナムの飢きんについてはハノイにある日本大使館は“先の大戦においてベトナムにおいても餓死者が出たことは事実であると認識していますが、その死者数などについて公式資料として御紹介できるような事実認定はないものと承知しています”とコメントしている。順天堂大学特任教授・藤原帰一が「我々が努力しなければ見えてこないこと」などとコメントした。

日本は賠償や戦後処理の一環としての経済協力、借款などで東南アジアに約7,723億円を支払ってきた。さらに現在まで受け継がれている外交方針が福田ドクトリン。1977年、当時の福田赳夫総理大臣が提唱したもので、“日本は軍事大国とならず平和に貢献”し“対等なパートナーとして地域の繁栄に寄与していく”ことなどを掲げた。その後もODA(政府開発援助)によるインフラ整備や保健医療などで協力を続け、信頼関係の構築に務めてきた。ベトナムでは日本によるODAによって発電所や道路などのインフラ整備や技術開発が進み、日本へのイメージを向上させたと言われている。ベトナムは「過去と閉ざし未来を志向する」というスローガンを掲げ、経済成長につなげた。50代会社員の声「東南アジアと中韓の太平洋戦争における日本に対する感情が違うのはなぜなのでしょうか」。藤原が「東南アジアの場合は始まりは賠償だった。中国の場合は日本に対して抵抗した戦争。韓国の場合は植民地支配」などとコメントした。

インドネシアは1942年から45年までの3年余り、日本の占領下に置かれた。今年、国立博物館で始まった展示からは日本による戦時下のプロパガンダという現代の戦争にもつながるテーマが見えてきた。

東南アジアから見た戦後80年 インドネシア

ジャカルタ・国立博物館には日本人の占領時代のプロパガンダ関連資料などが並んでいる。インドネシアの独立宣言から80年となる中、企画された展示。1942年、旧日本軍はオランダが植民地支配していたインドネシアに進駐。展示では世論に影響を与えようと“積極的に宣伝活動を行っていた”としている。日本が推進した「三亜運動」というキャンペーンのポスターには、日本への協力を訴えるスローガンが書かれている。学芸員・エコ・セプティアン・サプトラは“占領政策にプロパガンダが深く関わっていた”という。当時、日本側が制作した数々の映画もプロパガンダとして展示されている。後に初代大統領となるスカルノ氏が1944年、“日本側から独立の約束を伝えられた”とする場面も登場する。世界でウクライナ情勢などをめぐり様々な情報線が繰り広げられる中、学芸員はこうした展示を行うことの意義を強調する。

スタジオトーク

戦時下のプロパガンダについて、藤原が「現在に至る戦争のプロパガンダのプロトタイプになっている。繰り返されている。今の時代も起きている」などとコメントした。シンガポールの国立博物館では占領の歴史について、日本軍の行為による被害だけではなく住民を助けた日本人についても紹介するなど幅広い見方を伝えようとしている。

東南アジアから見た戦後80年 シンガポール

旧日本軍の占領下で多くの犠牲者が出たシンガポール。その歴史を伝える国立博物館には、日本の占領下に置かれた約3年間について説明する展示コーナーが設けられている。ひときわ目立つのが、抗日運動の関係者とみなされた大勢の中国系住民が旧日本軍に殺害された事件についての展示。展示されたパネルでは死者の数を不明としながらも“日本側は5,000~6,000人を殺害したと主張”とし、“非公式の推計では2万~3万人に上る”という見方も示されている。展示は日本人によって救われた命にも言及している。紹介されているのは当時行政に携わっていた篠崎護氏。“抗日運動に関わっていないとする証明書を発行して多くの中国系住民を助けた”と記されている。博物館は“幅広い視点の展示を通じて歴史をより深く理解してもらいたい”としている。リム・シャオビンは“祖父は抗日運動に関わったとみなされ日本の憲兵に殺害された”という。リムは日本側も含めさまざまな側面化からの資料を収集。集めた写真や地図などは博物館に寄贈してきた。

現地での捉え方は

バンコクと中継を結び、アジア総局の島崎浩よりレポート。東南アジアは旧日本軍による過酷な統治に加え、日米の激しい戦闘に巻き込まれるなど、今なお各地に傷跡が残っている。占領下に置かれた国々の特に高齢者には、今も日本への反感を抱く人もいる。ただそうした反感は、長い年月を経てかなり薄まっている。戦後巨額の経済援助を行い、平和国家として歩んできた日本への評価もある。マレーシアのように戦時中日本の支配に苦しみながら、戦後は「日本に学べ」と発展を目指した国もある。日本のアニメなどの影響もあり、東南アジアではどの国に行っても日本への親しみを表す人たちによく出会う。それでも東南アジアにとっての戦争の記憶が風化したとは言えない。戦争の体験者は年々少なくなり記憶の継承が難しくなっているが、悲惨な戦争の歴史が未来への教訓となってもらいたいというのが、多くの人たちの願いとなっている。

東南アジアから見た戦後80年 シンガポール

太平洋戦争で東南アジアで何が起きたのかについて、日本の若者の間でも学ぼうという動きが出ている。先月大阪大学で開かれた東南アジア学会の定例会では高校生が集まり、総合学習の一環で「東南アジアと戦後80年」をテーマに歴史教科書の比較や記録の考察を行った。生徒からは「同じ出来事が他の国ではどう語られているのか知りたい」など、多面的な視点で歴史を見ていきたいという声が聞かれた。

スタジオトーク

60代の視聴者から「もう自虐史観はやめよう。子孫に本当の日本の良さを伝える報道を」、また別の視聴者からは「私たちの多くは加害責任に向き合うことなく、被害の記憶だけ継承してきた」との意見が寄せられた。太平洋戦争の歴史や記憶にどう向き合っていくべきかについて、順天堂大学特任教授の藤原帰一は「戦争の責任を問われるのは、何よりも侵略をした政府。私たちは殺人の責任を負わされる立場ではないが、何が起こったのか知る責任はある。ベトナムでの飢餓について知っている人は、とても限られている。飢餓はジャワ、ミャンマーでも起こり、ベンガルでは大規模な飢饉が起こった。そこから目を背けると、『私たちが犠牲になった戦争』という語り方だけになる」などと述べた。「戦争が発生するメカニズムやそれを防ぐ方法を、過去の歴史と絡めて体系的に学ぶ教育が必要」との視聴者からの質問について、藤原は「白黒で決着がつくような問題ではなく、豊かで捉えがたいもの。当事者も単純化できないため、多くの経験者は語らない。だからこそ私たちは豊かな現実を再構成して、見ていかないといけない」などとコメントした。また別の視聴者から寄せられた「現代の日本人が東南アジアを訪れた時、若者から意見を求められても歴史を知らない日本人はパニックに陥る」との意見について、藤原は「知る機会だと思って知ればいい。豊かで分かりづらい現実を知り、違う立場から見える物語を発見する機会にしてほしい」などと語った。「歴史を学ぶことで、未来に向けてどう活かしていくか」について、藤原は「単純化された歴史に惑わされないこと。時間が経てば経つほど戦争経験は単純化され、正邪から見られやすくなる。しかし目を背けたくなるような暴力がたくさんあることもたしか。現在起こっている戦争と過去の戦争を結びつけて、戦争をどのように防ぐことができるのか、現在の課題として考えることが必要」などと語った。

WOW!The World
海外で暮らす若者 戦争の歴史学ぶ

海外に住むベトナム人の若者たち約100人が母国の歴史を知るためのサマーキャンプに参加した。南部・ホーチミン市郊外の村・クチ。ここは50年前に終結したベトナム戦争最大の激戦地の一つ。当時、戦闘のために掘られた狭い地下トンネルへ入る。若者たちが先人たちの経験を実感する機会となった。

「ビブグルマン」に選ばれたけれど

ミシュランガイドによる価格以上の満足感が得られる店「ビブグルマン」。シンガポールで今年選ばれた89軒のうち、7割以上は屋台。「待ち時間が長いと言われますがどうすることもできません」、「後継者がいない」など経営者たちはビブグルマンに選ばれても事業の継続は難しいと話している。

抹茶が人気で品薄

世界的ブームとなっている抹茶。オーストラリア・シドニーにあるカフェでは抹茶ラテがコーヒーより人気。売り上げの半分を占めている。インフルエンサーたちも抹茶は健康にいいとアピール。国際日本茶協会は「史上初めて抹茶不足が起きています」という。日本では観光客が土産に持ち帰るため、ますます品薄に。抹茶の原料が高騰し、大手メーカーも次々に値上げを発表。シドニーのカフェでも値上げを予定しているという。

INTERNATIONAL NEWS REPORT
中国 蘇州 日本人母子襲われ けが

中国東部の江蘇省蘇州で子どもを連れた日本人の母親が何者かに石のようなもので殴られてけがをしたことが分かった。母親は病院で手当てを受けたが命に別状はないという。現地の警察当局からきょう、日本側に容疑者を拘束したと連絡があり、容疑者は男だという。日本政府は中国政府に対して容疑者の厳正な処罰や類似した事件の再発防止、中国に住む日本人の安全確保を強く求めていくとしている。

アメリカ パレスチナ当局者らに制裁

アメリカ国務省はパレスチナ暫定自治政府の当局者やPLO(パレスチナ解放機構)のメンバーらがテロを支援しているなどとして、ビザ発給を制限する制裁を科すを発表した。アメリカ国務省はICC(国際刑事裁判所)などを通じてイスラエルとの対立を国際問題化しているほか、教科書などで暴力を扇動したりたたえたりしてテロを支援しているなどと主張している。アメリカのメディアは“来月開かれる国連総会の際にパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長らのアメリカへの入国が禁じられるかは不透明”だと報じている。フランスやイギリスなどがパレスチナの国家承認に向けた動きを示す中、アメリカの立場の違いを鮮明にした形。

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