イスラエル・ネタニヤフ首相の訪米が始まった。しかし、ワシントンはバイデン氏の選挙戦からの撤退と新しい民主党候補と目されるハリス副大統領の動きに関心が奪われている。また、ガザ地区での戦闘は続いていて、停戦のための交渉も進んでいない。ネタニヤフ首相が自分のために政治家としてのイメージをイスラエル国内向けにアピールするためのものという冷ややかな声も聞かれる。訪米中の予定には議会演説、バイデン大統領との会談、ハリス副大統領との会談、トランプ前大統領との会談がある。このうち、議会演説についてネタニヤフ首相は米国が超党派でイスラエルへの支持を続けるよう訴えることにしている。しかし、再選のための様々な配慮をする必要がなくなったバイデン大統領としては大統領のレガシーとして、これまでよりも強くネタニヤフ首相に停戦するよう求めてくる可能性もある。また、ハリス副大統領との会談ではバイデン氏よりもこれまで踏み込んでガザ地区の人道状況に懸念を示し、即時停戦を求めてきたハリス氏と向き合うことになる。一方で、26日にはフロリダ州でトランプ前大統領と会談する。トランプ氏は在任中にエルサレムをイスラエルの首都と認めるなど、イスラエル寄りの政策をとり、ネタニヤフ首相とも蜜月だったといわれている。このタイミングで大統領選挙の共和党候補との蜜月ぶりを演出すれば、ネタニヤフ首相の超党派の支持を確認するという狙いと矛盾する。イスラエル国内では辞任を求める世論にもさらされ、政権を維持するため、極右政党に配慮。自らの政治生命を伸ばすために今回の訪米も最大限、利用するとみられる。