長崎のお菓子のカステラ。創業230年を超える長崎・諫早市の菓子店もカステラを主力商品としている。この菓子店はカステラを世界の人に楽しんでもらいたいと9年前からカステラの輸出を始めた。社長は「お菓子に国境はないと思っている」と話す。菓子店の海外事業を任された若杉和哉さん。これまでに17の国・地域にカステラを輸出。ただ、比較的お菓子の安いタイでは富裕層の食べ物になってしまった。重くのしかかっていたのは輸送費などの輸出コスト。現地での販売価格が日本の約2倍にもなってしまった。悩んだ末に出した答えは輸出コストが無くせる現地での生産に踏み切ることだった。タイでの現地生産。若杉さんは協力してくれる現地企業を探し、タイ北部のチェンマイでケーキやパンを作っていた会社に生産を任せることにした。タイのスタッフがカステラを焼いてみたが、最初は上手くいかなかった。そのため諫早市に招き日本の工場で製造方法を伝授することに。卵・砂糖・小麦粉など材料はシンプルなカステラだが、出来上がるまでには約20工程ある。日本とタイで半年間の研修を重ねることで日本の職人も認めるレベルのカステラを作れるようになったという。そうしてタイで作られるようになったカステラ。砂糖だけは日本のものを使うことにしたが、1切れのカステラの販売価格は40バーツ(日本円で約160円)に抑えることができた。そして去年12月からチェンマイで始まったカステラの販売。1週間分として想定していた180枚は初日に完売した。若杉さんは「見るからにお金もちそうな人ではなくてフードコートに来た家族とかも買っていかれたので受け入れられる形にはなったのかなとは思っています」と話した。かつてポルトガルから長崎に伝えられたとされるカステラ。時を経て長崎からこの味を広げようという取り組みが進んでいる。紹介したもの以外にも新型コロナの影響もあった。タイで現地生産してくれる会社が見つかった矢先に新型コロナの感染が拡大し、日本とタイの行き来が難しくなって計画が一時中断されたことも。その後、一昨年になって計画が再び動き出したが、この会社がカステラの輸出を始めてからタイの現地生産が始まるまでに10年近い期間がかかった。若杉さんによると、タイを含めた海外の国では日本のお菓子は美味しくて完成度が高く安全安心だとして人気があるという。また、タイでは食事は辛いものが多いが、お菓子は甘いものが多く、カステラは新鮮な味として受け入れられているようだ。