会場(彩の国さいたま芸術劇場)に集まった皆さんと、オンライン参加の皆さんで、ヤングケアラーの支援について考えていくパネルディスカッションの模様をお送りする。森田久美子(立正大学社会福祉学部教授)は、問題の根底には本人や周囲が抱く“当たり前”という思い込みがあると指摘した。これに対して宮崎成悟(元ヤングケアラー)は、母親の介護の経験を話しつつ、確かに“当たり前”だと認識していたと話した。埼玉県は2021年7月から、学校に元ヤングケアラーを招いての出張授業を行っている。県は出張授業を通して、教員や友達にヤングケアラーの存在を知ってもらうことで悩みを打ち明けやすい環境を整えたいと考えている。この取り組みの中で、自身がヤングケアラーであることに気づいた生徒もいる。ヤングケアラーが相談しやすい環境を作るためにはどうしたらいいかという問いに、宮崎成悟はヤングケアラーが特別視されない環境を作るなどの取り組みが必要だと思うと話した。教員への研修など、ヤングケアラーの当事者だけでなく、大人たちの認識を変える取り組みも行われている。中野綾香(スクールソーシャルワーカー)は、昔と比べて家庭訪問が行われなくなってきており、ヤングケアラーからのSOSに気づきにくくなってきていることなどを話した。勝呂ちひろ(精神保健福祉士)は、自分たちの支援の対象は基本的に親の方で、訪問は子どもがいない日中に行うため、意識しないとヤングケアラーの問題に気づきにくいなどと話した。持田恭子(元ヤングケアラー)は、いきなり「相談してね」ではなく、ヤングケアラーの子どもたちが「この人は聞いてくれる」と安心・信頼できるように接していくことが、子どもたちが相談してくれるためには必要だと話した。持田恭子はヤングケアラーの集いの場を主宰しているが、みんなで楽しむことと、一方的なアドバイスをしないことを心がけている。大人はすぐに解決を求めようとするのではなく、まずはしっかりと子どもの現状を聞くということが大事。藤岡麻里(埼玉県地域包括ケア課)は、2021年10月31日から、県ではヤングケアラーたちが悩みや愚痴など気軽に話せる場として“ヤングケアラーオンラインサロン”を立ち上げたことを紹介した。埼玉県では、子どもたちのSOSを確実に支援につなげるネットワークづくりも始めている。SOSが上がっても、外部から家庭に介入していくことが難しいという現状もある。福祉事業者と教育機関をつなぐコーディネーターの存在が鍵となりそうだが、その担い手はまだ定まっていない。ヤングケアラーに対して必要な支援について、パネラーそれぞれが自分の考えをボードに記入して掲げた。「人生の岐路で一人にしない」と書いた宮崎成悟は、自分が乗り越えられたのは人生の大事な選択をするときに支えてくれた人がいたからだなどと話した。「親子まるっと伴走支援。」と書いた勝呂ちひろは、親子の会話からそれぞれの願いや思いを知っていけるといいなどと話した。「声を聴く」と書いた持田恭子は、解決策はヤングケアラー本人が持っているため、周囲の人はヤングケアラーがそれを選びやすいようにサポートできるといい、などと話した。