先月、東京のギャラリーで開かれた小松由佳さんの写真展。アサド政権の崩壊後、現地で撮影した写真が展示されていた。シリアから持ち帰ったアサド前大統領の写真もあった。政権崩壊後、ボロボロにされていたという。政権崩壊前後の違いについて、小松さんは、人の表情が違う、アサド政権下では閉塞感があった、政権崩壊後は、人々が自由にものを言っている、開放感に溢れた表情しているなどと話した。シリアでは、2011年に内戦が始まった。アラブの春が波及するかたちで起こった民主化を求めるデモを、アサド政権が武力で弾圧したことをきっかけに、反政府勢力との激しい戦闘となった。過激派組織ISが勢力を伸ばし、内戦は泥沼化。国外の逃れた難民と国内の避難民は、1200万人以上にのぼった。小松さんの夫・ラドワンさんは、内戦によってシリアを離れた難民のひとり。小松さんと結婚して東京で暮らしているが、今回のシリア行きに同行。13年ぶりに祖国の地を踏んだ。小松さんは、二度とシリアには戻れないと覚悟していたそうだ、政権が崩壊したことで自由に帰れるようになったなどと話した。シリアでまず向かったのは、サイドナヤ刑務所。政権側に拘束されたラドワンさんの兄がここで死亡したとみられている。兄のサーメルさんは、民主化を求めるデモに参加し、政治犯とみなされた。2011年からの10年で、30万人を超える民間人が犠牲となったシリア内戦。街には、行方がわからない家族の情報を求める張り紙が溢れていた。小松さんが最後に向かったのは、パルミラ。ラドワンさんの故郷で、内戦が始まるまで家族で暮らしていた。ISとシリア政府軍の戦闘により、街は破壊されていた。今回の写真展の最後に展示されていたのは、小松さんがパルミラで撮影したラドワンさんの写真。小松さんは、アサド政権崩壊がもたらしたのは、喜びだけでなく、深い悲しみであることを表現している、夫の心の揺れを描いているなどとし、政権が崩壊したから平和が訪れるというわけではない、ひとつひとつの問題と向き合いながら、人々が安心して暮らせる日常がある国になっていくことを願っているなどと話した。