北千住駅前で出会ったのは、飲み帰りでほろ酔い気分の男性・あいたにさん(84歳・通称あいちゃん)。タクシー代を支払う代わりに家までついて行った。推定距離は1.1kmで料金は900円だった。自宅は源信寺、あいちゃんは浄土真宗の住職だった。午後9時45分に帰宅。築50年の持ち家で間取りは8DKの2階建て。南無阿弥陀仏は「阿弥陀様のいる所に帰る」意味で、お経を読めば悪人でも救われると教えてくれた。取材スタッフが本堂で参拝させてもらった。本堂の隣は納骨堂。壁の向こう側にお骨が置いてあり、構造は自動車の立体駐車場と一緒で、カードを入れるとお骨が出てくる。30年前にいち早く導入し、当時はNHKが取材に来たという。生活スペースの2階へ上がると、妻・のぶえさん(82歳)がいて、リンゴとミカンをくれた。妻はカーテンをつけようと登った椅子から落ちて、右手を複雑骨折してしまい、あいちゃんが初めて料理をしているという。冷蔵庫にはあいちゃんが飲んでいる牛乳が冷えていた。朝ごはんはパン・ハム・卵だという。寝室は別。義父が早起きだったので、妻は今も朝4時に起きる。あいちゃんの日課はパソコンで、28年前からお寺の新聞を発行している。2人はお見合いで出会い、30歳と28歳で結婚して54年目になる。娘が2人、孫が1人いる。あいちゃんの部屋にはジオラマ。年金を貰うようになってから始めた。小さい頃の夢は電車の運転士だったという。アルバムを見せてもらうと、11歳で得度をしている写真があった。得度は出家し僧侶となるために行う最初の儀式。得度はお経さえ読めれば合格できるという。14歳以上になると、浄土真宗では真宗学・仏教学・教化・声明作法・法規の5科目を勉強し、これに受かると住職になれる。漢字ばかりのお経が嫌で、父への反抗もあり、大学は理工系へ進学した。押入れにはたくさんのスーツ。サラリーマンを2回経験した後、55歳でお寺を継いだ。一人っ子なので、就職の面接の時に必ず「お寺を継ぐんでしょ?」と言われてしまい、高校の先輩がやっている自動車製造工場に入れてもらった。30歳から会計事務所で働き、55歳で定年になった時に、父親が入院したので住職を継いだ。お寺の収入が少ないため、新たに墓地建設を計画したが、近隣住民に反対されてしまった。「墓地を造るとお化けが出る」と言われ、自動納骨堂を導入することになった。若い頃に社会で知った“世間”が今では糧となり新たなお寺像を創り上げた。住職は土日も休みがないので、人が集まるお盆前に夏休みを取ることに決め、年に1回の旅行でリフレッシュしている。北千住駅であいたにさんの家について行ったら…社会人の経験を活かしながら仕事を楽しむ住職の姿が見られました。
