映画「野火」初上映から10年目。終戦の日に向けてアンコール上映が毎年欠かさず続いている。戦争の恐ろしさを映画に込めた塚本晋也監督に思いを聞いた。今月11日、横浜関内にあるミニシアターで野火の上映が行われた。会場に現れた監督の塚本晋也の思いに共感した劇場はことしは全国で30に上った。この映画には派手な戦闘シーンはほとんどない。映し出されるのは飢えと孤独で理性を失っていく日本兵たちの姿。原作は大岡昇平の小説で、塚本監督は学生のころに読み強烈に映像が浮かび上がる。映画化を温め続け実現したのは50代になってから、自主制作だった。主人公、田村1等兵は塚本監督みずからが演じた。フィリピンで遺骨収集に参加、元日本兵にも直接会い取材を重ねてきた。監督が描きたかったのは生の戦争。戦場ではなく劇場でその恐ろしさを感じてほしいと上映後は観客と顔を合わせ対話を大切にしたいという塚本監督。野火公開から8年、塚本監督は終戦直後の闇を描いた「ほかげ」を製作。帰還兵、戦争で夫を亡くした女性、そして孤児たちが心に影を持ったままさまよう姿が描かれている。野火はきょうも渋谷など各地でアンコール上映が行われている。