認知症ではない疾患と間違われるケースもある。高齢者施設で暮らす89歳の矢野睦子さん。気分の落ち込み かかりつけ医にうつと診断され、薬による治療を受けていた。ところが症状に変化が現れる。突然、怒りっぽくなり、部屋を散らかすなどの行為が増えた。夜は眠れず、部屋の出入りを繰り返すようになった。上半身が大きく傾き歩くことすら難しくなった。矢野さんは改めて専門医を受診した。医師の木村さんは認知症の原因疾患の一つであるレビー小体型認知症を疑った。決め手は症状に加え幻覚の症状が出たことだった。レビー小体型認知症では後頭葉に障害が出るため幻覚が出やすい。この疾患は薬に反応しやすく、うつの薬によって症状が悪化した可能性もあった。薬の処方を変えてわずか1週間で体の傾きが治った。他の症状も落ち着き、今では施設での暮らしを満喫している。レビー小体型認知症では初期にうつ症状が出やすいこと、薬の服用で症状が複雑化していたことで診断に誤りが出たと考えられる。