オルバン首相はハンガリーが今月1日にEU(ヨーロッパ連合)の議長国についた翌日に早速、ウクライナを訪問。ゼレンスキー大統領に対しロシアとの一時的な停戦と和平交渉の開始を検討するよう促した。EUの議長国は輪番制で任期は6か月だが、加盟国間の意見調整などを担う役割も持つ。ハンガリー・オルバン首相がウクライナが到底、受け入れられない一時停戦などの検討を促したことには“ヨーロッパの異端児”とも呼ばれるオルバン首相の人物像や主義主張が深く関わっている。オルバン首相は右派の政党を率い強権的な政治姿勢で知られている。ロシア寄りの姿勢でも知られロシアによるウクライナ侵攻ではEUのウクライナ支援に反対してきた。また、ウクライナのEU加盟にも反対している。対外的にはロシア・プーチン大統領と個人的に良好な関係を維持。去年10月には、北京でプーチン大統領と会談するなどEUの首脳として異例の対応をとっている。さらには、中国・習近平国家主席そして、米国大統領への返り咲きを目指すトランプ氏とも良好な関係を築いている。中国については習主席が今年5月にヨーロッパ訪問の中でハンガリーを訪れた時、EUが中国に対して警戒感を強めるのに反するかのように中国と経済関係を強化することで合意した。オルバン首相はトランプ氏支持を表明している。今年3月には米国南部フロリダ州のトランプ氏の自宅を訪れて会談しバイデン政権から顰蹙を買った。オルバン首相が今ウクライナを訪問して一時的な停戦と和平交渉を検討するよう促した狙いについてワシントン・ポストは専門家の話としてオルバン首相は自分は建設的な人物で平和の擁護者というイメージを作りたかったという分析を示している。ヨーロッパ議会選挙でウクライナ支援に批判的な右派や極右の政党が議席を増やし、フランスの下院議会の選挙の1回目の投票でも極右政党が躍進する中、オルバン首相の動向はEUのウクライナ支援の足並みをさらに乱れさせる可能性がある。