胡暁姝さんは生後6か月のころ聴覚を失った。原因は医師の投薬ミスだったという。小さい時はろう学校に通い、手話で両親と話す以外、耳が聞こえる人との交流は殆どなかった。大学生の時、聴覚障害者が集まるヨーロッパのキャンプに参加し、各国の参加者と交流した。聴覚障害者が同情や支援の対象者だと受け止められることはなく、参加者の誰もが、自立し自信を持っている姿に驚いた。胡暁姝さんはオーストリアに留学、現地の手話通訳者の協力を得ながら芸術などを学んだ。卒業後も現地に残ってヨーロッパで就職し、舞台演劇などの活動もしながら18年間を過ごした。コロナ禍を機に4年前中国に帰国。手話講師として働きながら聴覚障害者を特別な存在にせず共に生きる社会を目指して活動している。活動の一つが去年から友人たちと始めた聴覚障害者にも優しいクラブのイベント。聴覚障害者も音楽を楽しめるように音の低音域を強調し体に響くよう設計している。250人が参加し、半数が聴覚障害者だった。この日はカップルマッチングがあり、その場で気に入った人を選ぶ。すると、聴覚障害者の女性と聞こえる男性のカップルが成立。スマホのメモ機能で自己紹介し連絡先も交換した。胡暁姝さんも回を重ねたイベントに手応えを感じている。こうしたイベントは胡暁姝さんが続けている手話の普及にもつながっており、クラブのイベントがメディアで取り上げられるようになり、胡暁姝さんのもとで手話を学びたいという人が増えている。手話と接点が無かった人を対象にした体験講座にも25人が集まった。多くの参加者にとっては初めての手話の世界。少しでも手話を身近なものにしたいと胡暁姝さんは地道な活動を続けている。