日本の最西端に位置し人口1600人余りの与那国島。台湾まで111キロの国境の島には、2016年に自衛隊の駐屯地が開設。人口の増加や経済効果を期待する声も高まった。しかし今、暮らしの基盤そのものが大きく揺らいでいる。その1つが深刻な住宅不足。移住や親元からの独立で住宅のニーズは常にあるが、島内には不動産会社はなくアパートなどの賃貸物件は限られている。住宅の新築には大工を長期間島外から呼び寄せる必要があるなど簡単にはできない離島ならではの特殊事情がある。7年前、島の景観に惹かれ移住してきた前中さん。移住者の呼び込みに力を入れている与那国町が用意した期限付きの定住促進住宅に3年間住んでいた。去年10月に期限を迎えたとき、想像を超える島の住宅不足に直面。前中さんは自らの収入で支払える家賃の住宅が見つからず、なんとか紹介してもらった空き小屋を改修して生活することを選んだ。島の人達の力を借り、今年5月にようやく落ち着けたという。さらに島を揺るがしているのが島唯一の診療所の行方。町が管理運営を委託している団体が、医師の確保が困難になったなどを理由に来年4月以降の更新をせず撤退の意向を示している。もし無医地区になった場合、診察を受けるには島の外への交通費までのしかかってくる。島の医療体制のほころびに拍車をかけているのが、今年6月からの薬剤師の不在。島で日常となっているのがオンラインでの処方薬の説明。薬局の撤退を受けて、県内の企業が急遽対応。診療所の処方を本島で受け、薬は最速翌日の航空便で届けられる。赤字覚悟の企業の志によって持ちこたえているのが現状。専門家は、与那国島のように医療危機に追い込まれていく地域が今後増えていくと指摘。
