去年の冬、江東区にオープンした就労支援施設・アトリエにっと。この施設の代表である坂裕明さんは長年障害者福祉の現場で働き、見えてきた課題をもとに障害のある人たちのアート作品を収入につなげる試みをはじめた。この施設では利用者の作品をデジタル化し、複製画作り飲食店・オフィスに貸し出しをしている。始めたのは3か月ごとに入れ替わるアートのサブスクで絵が入れ替わり飾られるたびに作者に収入が入る仕組みとなっている。中村太一は3歳の時の集団食中毒で高次脳機能障害になり、認知の障害に加え重いてんかんもあるという。18歳の頃から絵を描き始めアート制作に特化しているこの施設を自ら探して、今年から通い始めた。太一さんはてんかんの発作の前に見えたゆがみ・うず、そのときの感情などを絵に込めていた。絵を通して悩んでいる人を助けたり、社会貢献したいと考え始めていた。長年太一さんを見てきた主治医は脳の障害による特有の見え方が絵の表現にもつながっているという。太一さんが18歳の時に描いてプレゼントした似顔絵は初めて都内の会社に飾られることとなった。母親と施設のスタッフたちと訪れたのは作品が飾られる会社であり、絵を太一さん自ら飾っていた。絵には”自分だけに見える世界観を表現しながら社会に貢献したい”と説明が添えられた。