きょうから新年度、各地で入社式が行われた。初任給の引き上げなど、各社が人材確保の取り組みを強化している。冷たい雨、4月とは思ないほどの寒さだが、桜は満開。新年度初日をどのように迎えたのか街頭で聞いた。この春、転職をしたという人や40代で新しい事業にチャレンジする人もいた。各地で入社式。大阪・吹田市・万博記念公園では、今月開幕する大阪関西万博の会場の設営などを手がけるグループ会社の合同入社式が行われた。水槽の中に入り、スーツ姿で辞令を受け取ったのは水族館の新人飼育員。広島市西区の食品メーカーでは、一人一人が特技を披露するなどして決意表明。家族への感謝を伝えた人も。鉄道やホテル事業などを展開する西武グループの新入社員たちが、入社式が行われるベルーナドームの最寄り駅まで、新入社員を送った。入社式には、グループ全体の新入社員830人余が参加。このうち西武ホールディングスでは、今年度から人材確保のため、大卒の初任給を6万8000円引き上げ、32万円とした。西部ホールディングス・西山隆一郎社長は「スタート時点の最初の賃金でかなり重要な戦略的意味を持っている」と語った。大成建設・相川善郎社長は「今年度より当社は新人事制度をスタートする」と述べた。大手・大成建設は、総合職の新入社員の初任給を4年連続で引き上げ30万円に。さらに転勤制度も見直し、総合職で全国型に加え、勤務地が限定されるエリア型を導入するほか、転勤する際に最大で100万円を支援する制度も始める。いま企業の間では、初任給だけでなく、人事制度全体を見直す所が相次いでいる。働くことに対する多様な価値観に対応するため。4月から入社する企業などで何年働き続けたいかを聞いた調査では、10年未満と答えた人の割合が合わせて37%に上った。転勤制度を見直した建設大手の人事担当者・人事制度改革プロジェクト室・三浦哲郎室長は「長い間、当社で働いてもらいたい。人事制度が社員にとって働きやすい、働きがいのあるものにしていかないと、会社としても生き残っていけないのではないか」と語った。人材確保に苦戦する企業も。神奈川・川崎市のバス会社の入社式には6人の新入社員が参加。このうち運転手の候補については10人程度の採用を目指していたが、応募者が少なく入社したのは2人にとどまった。バス会社・野村正人社長は「一部路線はやむなく減便。(バスは)地域の皆様になくてはならない乗り物」と語った。バス会社では、ことしから初任給を1万円増やし、運転手の候補は21万5000円にしたが、厳しい採用状況が続いている。バス会社・高橋秀彰雇用対策課長は「いまあるバスの運行が確保できない。どんどん来てほしい」と語った。能登半島地震の被災地でも。石川・輪島市新人職員・木下晴仁さんは、高校在学中に被災地でボランティア活動を経験し、市役所で働きたいと思うようになった。配属されたのは、高校のすぐそばの門前総合支所。輪島市では、地震で被災したことなどを理由に、計76人の職員が早期退職。人材の確保が課題となっていて、新人職員の活躍に期待がかかる。木下さんは「高校3年間、輪島市門前で暮らして、地域の方々やたくさんの支援があった。そういう人たちのために働きたいと思った」と語った。