ウクライナの子どもたちが奏でているのは、コカリナ。1本のガジュマルの木から作られ、海を渡った。沖縄・伊江島にある大木「ニーバン・ガズィマール」は、80年前、激しい地上戦を見ていた島のシンボル。この木の上で、終戦を知らずに隠れ続けた2人の兵士がいた。その1人、うるま市出身の佐次田秀順さんは銃撃でけがを負ったが、なんとか生き延びた。このガジュマルがおととしの台風で倒れてしまった。この木がコカリナに生まれ変わった。息子の佐次田満さんの呼びかけで、コカリナの演奏会が佐次田さんの母校で開かれることになった。会場の宮森小学校には、1959年、米軍の戦闘機が墜落した。佐次田さんは当時5年生だった。事故では児童など18人が犠牲になった。ガジュマルからコカリナを作った黒坂さんを招き、当時のことを伝えた。佐次田さんは、平和の尊さを後輩たちに伝えたいと演奏会を依頼した。佐次田さんは、地球上にはまだ戦争がある、ことばは違うが外国の子どもたちともつながっている、平和を目指して子どもたちは育っていったらいいと思うなどと話した。佐次田さんは、当初は墜落事故の記憶をほとんど語らなかったが、11年前、自身の経験を初めて同級生の前で語った。沖縄をめぐる安全保障上の環境が厳しさを増してきたころで、いま伝えておかなくてはという切迫した思いだったという。今回は、ウクライナなど世界でいま起きている戦争などにも目を向けたうえで、平和について考えてもらおうとコカリナを贈る企画に参加するなどした。アメリカ統治下の記憶がある人も高齢化している。佐次田さんは、コカリナの演奏会を沖縄戦から80年となることし6月、慰霊の日の前後に沖縄で開く予定だ。