日銀が短観(企業短期経済観測調査)を発表した。短観は国内9000社余りの企業を対象に3か月ごとに行われ、景気の現状について「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた指数で景気を判断する。今回の調査はきのうまでのおよそ1か月間行われ、大企業の製造業の景気判断の指数はプラス14ポイントとなり前回の調査を1ポイント上回った。指数の改善は2期ぶり。自動車が生産の回復に伴って判断が改善したほか、生産用機械も企業の設備投資が堅調だったことで改善した。一方、大企業の非製造業はプラス33ポイントで前回を1ポイント下回り、2期ぶりに悪化。特に消費に関わる業種で景気判断が大きく悪化した。人手不足や人件費の上昇によって負担感が高まっていることが背景にあるとみられる。さらに3か月後の先行きの見方を示す指数は大企業の製造業がプラス13ポイント、大企業の非製造業がプラス28ポイントといずれも現状判断の水準を下回り、慎重な見方が示されている。大企業の製造業の景況感は改善したものの、今回の短観では足踏みが続く消費の現状を表す結果となった。とりわけ小売や宿泊飲食サービスでは判断が大きく悪化し、物価上昇が続く中、直接消費者に向き合う業界では景気の回復に自信が持てない様子もうかがえる。これ以上の値上げは消費を冷やしてしまうという懸念がある一方、コストの上昇分を販売価格に転嫁できなければ賃上げの勢いがしぼんでしまうリスクもある。物価を上回って賃金が上がり消費につながるという好循環にまだ手が届いていないのが日本経済の現状。