アメリカの相互関税。多くの専門家の想定をはるかに上回るものだったと、アメリカメディアも伝えている。友好国、敵対国を問わない強力な関税措置は、世界経済に深刻な影響を及ぼすだけでなく、先進国の中でも唯一堅調さを保ってきたアメリカ経済自体にも打撃を与えるという見方が広がっている。また、アメリカの政治専門サイトは、トランプ大統領の政権運営にも影響が出る可能性もあると指摘している。与党・共和党内でも、相互関税については評価が分かれていて、2026年の中間選挙で悩まされるのではないかと話す共和党議員もいると伝えられている。そうした懸念や批判もある中で、今回の措置に踏み切ったトランプ政権のねらい、どこにある。これだけ大規模な関税を課せば、今なお根強いインフレが再び加速するおそれがあり、輸入品に頼らざるをえないアメリカ企業にとっては、収益の悪化に直結する。しかし、トランプ大統領には、関税によって短期的には痛みを伴ったとしても、中長期的には貿易赤字の削減や、アメリカへの製造業回帰につながるという考えが根底にある。そしてトランプ氏とその政策を支持する人物を登用した政権内では、関税がアメリカ政府の財政にとってプラスになるだけでなく、中国への依存を減らすことにつながるなど、前向きな認識を持つ幹部しかいないともいわれる。今後、国ごとに設定された関税の撤廃や引き下げに、どこまで交渉の余地があるのかが焦点になるが、各国にはアメリカとどう向き合っていくのかという、極めて厳しい課題が突きつけられている。