今回の総選挙を前にイギリス政府が特に警戒を強めていたのが生成AIを用いた偽情報の拡散。政府は選挙を前に候補者と関係者に向けてオンライン上の偽情報とAIの脅威に関するガイダンスを発表。偽の画像や動画を生成されて攻撃された場合、SNSの運営側や選挙委員会に報告するといった初動対応を共有し、悪影響を最小限にする努力を求めた。投票の4日前にはダウデン前副首相が「ロシアなどの敵対勢力が偽情報の拡散を通じて選挙の結果に影響を与えようと介入を試みている」と警告した。選挙戦の間に、偽情報の発見やファクトチェックを行った企業もある。ロンドン中心部にあるあるスタートアップ企業は7年前に設立。今回の総選挙で監視・分析を行った。この企業が着目した画像の1つが投票日の前日にSNSに投稿されたもの。5万回以上閲覧されている。首相官邸前でひざまずく人々。「イスラム教徒が首相官邸前でスターマー氏に敬意を表す」と書かれていいる。労働党のスターマー党首が中東などからの移民の受け入れを大幅に緩和しようとしているといった誤った印象を広げるのが狙いだとこの企業は見ている。ただ状況に違和感があるこの画像、企業は人々の体の部分に不自然なところがあり、実際の首相官邸とは建物の一部のデザインが違うことからこれを偽画像と断定。「FAKE」とラベルを貼りサイトに掲載し警鐘を鳴らした。いまこの企業が力を入れているのがAI技術を生かした偽情報の監視。選挙前には毎日、SNSやニュースサイトなどから政治家や政党についての数百万件のデータを取り込み、内容が肯定的なのか否定的なのかを分類し、投稿元を突き止めていた。どんな話をしているのかを画像化するシステム。画像の複数の点はネット上の投稿などの情報でそれぞれがつながりを持っている。発信元を詳しく分析し対象者の脅威となりうる偽情報なのか判断している。この企業は今回の選挙に先立ちアメリカやインドで行われた過去の選挙でも、選挙委員会やサイバー警察に協力して偽情報の監視にあたった。しかし、代表は複雑化し増加する偽情報に対処する企業の数は世界的に見ても十分ではないという。