痰の吸引や人工呼吸器などが欠かせない医療的ケア児の母親たちの中には、働きたくてもあきらめざるを得ない人が少なくない。そうした母親たちに社会で活躍してもらおうという取り組みが広島市で始まっている。広島市東区のマンションの一室に集まる女性たちはいずれも重い障害のある子供たちを育てている母親。日頃のケアで気になっていることを月に一度話し合っている。母親たちは製品のユニバーサルデザインや施設のバリアフリーに関する助言などを行う会社のスタッフ。2年前、この会社を立ち上げた村尾晴美さんは広島市からの依頼で新たに建設される展示施設の設備についてアドバイスした。村尾さんはかつては自分が働くことなど考えもしなかったという。28歳の息子・祐樹さんは脳に重い障害があり、歩いたり自ら食事をとることはできない。転機となったのは当事者家族の会で活動を始めたこと。そこで若い世代の母親たちが抱える悩みに触れた。ケアの経験を生かす新たな試み。村尾さんの役割は医療関係者や企業からニーズを聞き取りスタッフの母親とつなぐこと。