今日、厚生労働省が年金部会を開き、将来的に全ての人が受け取る基礎年金の水準を引き上げることや、在職老齢年金制度の見直しなどを話し合った。厚労省が正式に示したのは全ての人が受け取る基礎年金を底上げする案。その財源は、会社員などが加入する厚生年金の積立金を基礎年金に回すというもの。年金制度は20歳以上60歳未満の全ての人が加入する国民年金(基礎年金)というのが基本。会社などに勤務する人は、厚生年金に加入することで2階建てとなっている。2つの年金は現役世代が減っても制度が保てるように賃金や物価の変動をもとに支給額が改定されている。この仕組みはマクロ経済スライドといい、年金額が保険料の収入でやりくりできる水準になるまで、賃金や物価の伸びより少し低い伸びで改定される。現在、基礎年金と厚生年金の財源は別々に管理されているが、状況は全く違う。厚生年金は女性の社会進出により、働く女性が増えていることなどから財政は安定しているため、マクロ経済スライドで年金を減額する期間というのは2026年度に終了する。一方で、基礎年金はデフレ下で計画どおり減額が進まない期間があったため、年金の減額は2057年度まで長引く見通し。厚生年金の財源を基礎年金に回すことで、基礎年金の減額期間を縮めて給付水準を底上げする案が浮上した。今回の案では2036年度以降の基礎年金の給付水準が、現在の見通しより3割改善する見通し。基礎年金しか受け取れない自営業や低収入の会社員などが受け取る年金の水準低下を防ぐことができる。厚生年金を受け取る人の大半も基礎年金の受給額が増えることになる。厚生労働省のモデルケースでは、夫婦で受け取れる金額は現行制度のままよりも2万円以上増えることになる。社会保険労務士法人 V−Sprits・渋田貴正は「現役時代の給与が高くて厚生年金が手厚い方からすれば損するという方も出てくるけど、日本全体で運用している制度なので、メリットある制度なんじゃないか」と語った。