そんな辰巳化学に1台のタクシーが。これが変革への大きな流れの始まりであった。客の到着を辰巳の首脳陣が待っていた。やって来たのはMeiji Seika ファルマジェネリック事業戦略部の小林郁夫部長である。菓子メーカーの大手・明治は戦後、ペニシリン製造を機に医薬品事業にも参入した。その後Meiji Seika ファルマとなり、今や売上高はおよそ1400億円。先発薬やワクチンを手掛け、ジェネリックの分野でも売上トップ10に入る製薬会社である。明治の小林さんは安定供給に悩む辰巳化学にある提案を持ちかけていた。会議には中岡さんはもとより、社長の黒崎隆博さんも同席していた。ジェネリック業界特有の事情である少量他品目生産はそれぞれのメーカーが同じ成分の薬を作っている。そこで複数の会社が手がける同一成分の薬を1つの工場に集約して製造しようという提案であった。これにより時間がかかっていた製造ラインの部品交換が減り効率化が期待できる。明治からの提案を受けて辰巳はこの提案を前向きに検討することとなった。こうした動きは実は国が主導したもので積極的に動いていたのは当時の武見敬三厚労大臣である。去年7月、厚労省に集められていたのは主要ジェネリックメーカー13社の代表で武見大臣は業界に再編を促した。1年後の今年7月、Meiji Seika ファルマが記者会見で発表したのは新・コンソーシアム構想。コンソーシアムとは共同体という意味であり、中小のメーカーが連携して製造拠点を集約し安定供給を目指すというもの。この構想をけん引するのがMeiji Seika ファルマの小林会長である。会長は社内のプロジェクト会議にも欠かさず出席し、檄を飛ばす。その会長の意を受け、小林部長は動いていた。薬剤師の資格を持つ小林さんは10年に渡りジェネリックの開発にも携わっていた。去年、プロジェクトの立ち上げとともにジェネリック事業戦略部の部長に抜てきされた。しかしジェネリックメーカー同士の協業の難しさに頭を抱えていた。見せてくれたのはこれまで交渉してきたジェネリックメーカーのリストである。これまでおよそ30社に声をかけたが交渉は難航していた。
苦戦しながらも粘り強く交渉を続けてきた小林さん。ようやく賛同してくれる会社が現れ、富山市に本社を置くジェネリックメーカー・ダイトである。今後の品目統合に向けて小林さんは製造現場を自ら確かめる。8月上旬、明治とダイトの声がけにより新・コンソーシアム構想への参加企業は6社にまで増えていた。この日は明治とダイトの2社で参加企業の品目をどう割り振るか話し合う。早速ある薬について小林さんからダイトの沖野真二さんに提案があった。また別の薬ではある会社に製造を打診したところ、どの薬を引き受けるかが利益に直結するためなかなか話がまとまらなかった。そんな中、あの辰巳化学が覚悟を決めていた。
苦戦しながらも粘り強く交渉を続けてきた小林さん。ようやく賛同してくれる会社が現れ、富山市に本社を置くジェネリックメーカー・ダイトである。今後の品目統合に向けて小林さんは製造現場を自ら確かめる。8月上旬、明治とダイトの声がけにより新・コンソーシアム構想への参加企業は6社にまで増えていた。この日は明治とダイトの2社で参加企業の品目をどう割り振るか話し合う。早速ある薬について小林さんからダイトの沖野真二さんに提案があった。また別の薬ではある会社に製造を打診したところ、どの薬を引き受けるかが利益に直結するためなかなか話がまとまらなかった。そんな中、あの辰巳化学が覚悟を決めていた。
