心理学者の石津智大教授は人が芸術を見た時、どう感じるのかを研究している。人は違和感のあるものを目にすると、「何故、こうなっている?」と理由を探し、注意が惹きつけられるという。本阿弥光悦は異様に膨らんだ形状の「舟橋蒔絵硯箱」で、鑑賞者の脳を刺激し、注意をより惹きつけていたという。また、無意味と思っていたものを突如として理解し、意味を見出した瞬間は「アハ体験」と呼ばれる。光悦の「舟橋蒔絵硯箱」には後撰和歌集の和歌が記されているが、実は「舟橋」というワードだけ欠落している。ただ、舟、橋は蓋に散りばめられた和歌の背景にしっかり表現されている。