愛媛・今治市は造船所や海運業がひしめき合う世界有数の海事都市。今治造船は日本一の建造量を誇っている。町の造船所から出発、タンカーなどの大型船を年間70隻造る生産力でその名が世界に轟く。営業本部長の檜垣清志には気になる会社があった。それは広島・呉市にあるジャパンマリンユナイテッドだった。ジャパンマリンユナイテッドは戦艦「大和」を造った工場を受け継ぎ、イージス艦や南極観測船など特殊な船も造ってきた。高学歴の設計者が数多く在籍するエリート集団。建造量は国内2位。今治造船を目の敵にしていた。営業部長の廣瀬崇は今治にだけは負けるなと社員を鼓舞し続けてきた。2019年、春、今治造船とJMUに一通の知らせが届いた。世界最大級のコンテナ船、その競争入札を行うという。呼びかけたのはONE。コンテナ24000個が積めるメガコンテナ船が6隻必要だという。1500億円の巨大案件だった。かつて造船はお家芸だったが2000年台、韓国と中国に負けてしまった。ONEの条件は6隻を半年で収めることだった。檜垣はこれを取るには宿敵JMUと組むしかないと考えた。檜垣はJMUの廣瀬のもとを訪れ日本のために手をくみませんか?と伝えた。数日後、悩む廣瀬に檜垣は設計はJMUに任せると伝えた。こうして2社は手を組むことが決まった。廣瀬は設計を吉川拓郎に任せた。カギはいかに積載量を増やしながら燃費をよくするか。今回は横幅は過去最大。しかしこの広さだと傾いた時に戻そうという力が強すぎてコンテナが崩れる可能性がある。そこで吉川は水面に当たる部分を細くし、コンテナを積める大きさと安定性を両立させ、燃費が3%向上するよう、緻密に計算されたカーブを描いた。さらに風貌を小さくしコンテナを積めるスペースを生み出した。こうして吉川の設計が完成し勝負することにした。2020年12月23日、入札結果が発表。見事、入札を勝ち取った。
