田中総理と毛沢東国家主席が会談した際、大平外相は中国側から「贈り物がある」と一枚の手紙を受け取った。「ジャイアントパンダ」と中国語で書かれていたが、大平外相はこれが何か分からなかったという。手の届かない外交問題に諦め気味だった上野動物園の浅野園長にとっては、青天の霹靂だった。日中国交正常化から1カ月後、羽田空港に降り立った旅客機から下ろされた2つのコンテナはトラックに乗せられ、多くの人が待ち望む上野動物園に向かった。当時の記録映像には、中国の専門家からパンダの食事を学ぶ飼育員の姿があった。パンダ一般公開の日には、動物園を埋め尽くすほどの人が殺到。徹夜組を含む約1万8000人が詰めかけ、観覧待ちの行列は約2kmにも及んだ。講談社特別編集委員の近藤大介さんは「当時の世論調査では、中国に親しみを感じるという人は70%~80%。国交正常化したからパンダが来た、パンダが来たから日本人が中国を好きになった」などと語った。今回54年ぶりに日本から姿を消すパンダが、再びやってくる日は来るのか。
