2月中旬、石田剛太がやって来たのは群馬・嬬恋村。平均気温は氷点下5℃、あえて寒い場所で接着剤作りに挑む。専門家の意見や文献をまとめた指示書を基に作業する。膠は4500年前のエジプトの壁画で絵の具をくっつけるための接着剤として使われていた。墨や日本画の絵の具を定着させ、耐久力を高める役割があり、バイオリンなどの木製の楽器作りでも強力な接着力が重宝されている。さらに温めれば再接着できる特性から修理にも適しており、文化財の修復にも使われている。まずは大型哺乳類の皮を入手。群馬県における農産物への動物の被害は約3億2000万円。その被害の55%が嬬恋村で発生しているという。今回は増えすぎた数を調整するために狩った冬毛が生えたオスの鹿の皮を使用する。次に肉や脂肪を皮から取り除く。膠を作るのに使うのは真皮に多く含まれるコラーゲン。ナイフを使って肉や脂肪を取り除いていく。続いては皮を川に漬ける。微生物の作用、皮自体が持つ自己分解酵素の作用で組織がゆるんで毛が抜けやすくなるという。皮が腐らないようにするため、寒い時期に作業をする。石を乗せて動物に持っていかれるのを防ぎ、皮全体が水に漬かるようにする。