清水は去年7月に行われた全国高校総体の男子100mで10秒00を記録。最高時速41.9kmにもなる走りをAIで解析した。際立ったのはスタートから30mの1次加速。骨盤が平均6.9度傾くことで上半身の大きな動きにつながっていた。日本記録保持者の山縣亮太選手は体がほとんど揺れないが、清水は骨盤を中心にうねっている。多くの日本選手はピッチを速くするために体の揺れを抑えるフォームを進化させてきたが、清水は違った。運動工学が専門の筑波大学・谷川聡准教授はその3次元の動きに注目した。筑波大学の選手に協力してもらい、その動きを分析した。2次元は腕も膝もまっすぐに出す動き。肩のラインと骨盤のラインはまっすぐで、足が上がりやすくピッチを高める。3次元は骨盤が上下動する分、大きな力を地面に伝えやすい。腕も少し外側に振る形になる。体重を左右に移動させていくので、お腹の中でキャッチボールをして前に進めていく感じだという。反発力を比較すると、2次元が最大2631ニュートンだったのに対して、3次元は2862ニュートンと9%増加した。0.01秒を争う100mでは驚異的な差となる。谷川は自転車の立ち漕ぎに例え、3次元の動きのおかげで空に浮いて速く走れるのが特徴だと説明した。反発力を生むうねりは「間」を意識した独特のリズムと天性の体を精緻に動かす感覚だった。清水の正確な記録は9.995秒。1000分の1は切り上げとなるため、9.990秒で走れば9秒台となる。人のまばたきは0.100秒。それより速い0.005秒を削る世界で戦う清水は「コンマの世界で争う競技で勝ち負けが決まる。10秒以内で誰が見ても勝敗がすぐ分かる。速い者が勝つ面白い競技」と語った。
