群馬・川場村のこんにゃく農家・小林政幸(63)は去年までこんにゃくいもを育てていた畑で4月から漢方薬の原料「ヤマトトウキ」の栽培を始めた。農林水産省によると、ヤマトトウキは冷え性や月経不順などに効果がある。昨年度、こんにゃくいもの取引価格が大きく下落したのがヤマトトウキの栽培のきっかけだという。約10年、こんにゃく製品の需要が減少の一途をたどっている。こんにゃくは下ゆでが必要で手間がかかり、冷凍食品にも不向きのため需要が落ちているのが背景にある。こうした実情に漢方薬の製薬会社が目を付けた。漢方薬はこの15年、年々需要が増え生産額も倍以上になっている。2001年以降、漢方薬が医学生の必修項目に組み込まれたことが大きく影響している。一方、原料である生薬の8割以上が中国産で天候不順などにより安定的な調達が難しくなり、さらに円安も追い打ちをかけていた。そこで製薬会社は原料の国産化を進めたいと考えた。農機具はこんにゃくいも用のものを使用でき、初期投資も少なくて済む。群馬県農政部・須藤薫は「こんにゃく芋の価格も低迷しているのでそれを補う作物としてトウキは契約栽培で単価が安定している。県として進めている作物のひとつ」と話す。