東京・世田谷区の成城石井本店。午前9時過ぎ、店の前には長い列ができていた。そのお目当ては愛知県産のうなぎや日本三大和牛のサーロインステーキセットなどオープンを記念し特価で売られている。リニューアルオープンで成城石井が打ち出すのが既存の路面店の強化。そのため生鮮売り場の品揃えと質を強化したという。さらにこの店舗には惣菜専門のキッチンが併設。店で仕入れた野菜やフルーツなどを使い店舗内で調理している。成城石井はこれまで全国に3つあるセントラルキッチンで惣菜などを一括調理し、全国の店舗に届けることに力を入れてきたがその方針を転換。路面店については店内での調理を強化し、高齢者などの中食需要に対応することで、売上のさらなる拡大を狙う戦略。成城石井がかかげる新たな戦略に至るまでには社内で攻防もあった。1か月前の成城石井本社の会議で打ち出されたのはリニューアルオープンに向けた方針。こだわったのは「温故知新」。長年の顧客を大事にしながらも新たな商品を売り出すという二正面戦略だ。しかしこれが社内の衝突を生む展開に。目玉となる店内調理の惣菜の新商品。試食した原社社長は昔の味が再現できていないとダメ出し。原社長は温故知新の「温故」が重要だとして成城本店を昔から利用する客に数十年前当時の味を再現して届けたいという。一方、惣菜の開発責任者である水野さんは「知新」、つまり新しさが大事だと主張。例えば肉団子について今の顧客に合わせた新しい味を提供したいという。しかし原社長はできればもっと当時の味に戻してほしいと言い、ほぼすべての商品が作り直しとなり水野さんは表情が凍りつく。リニューアルオープンのきょう、並ぶのは水野さんと原社長のぶつかり合いの中でできた惣菜。開店直後から次から次へと買われていく。