急成長する中国のフードデリバリー産業。それを支える配達員の中で増えているのが聴覚障害がある人たちで、その数は中国全土で1万2000人。アプリの普及でこれまでできなかった仕事に従事できるようになった。そんな彼らは自分たちの事を“無声騎士”と呼んでいる。四川省の成都ではコロナをきっかけにフードデリバリーの人気が高まっている。配達員の趙現波さん。配達員の仕事はスマホのアプリに表示される。無声騎士たちは音の無い世界で生きている。客の間でも無声騎士の存在が少しずつ認知され、現在趙さんの月収は約17万円。中国の大卒の平均初任給の1.5倍になる。中国の聴覚障害者は約3000万人。その多くが政府の援助に頼っており、半数以上が月6万円以下で暮らしている。彼らにとってフードデリバリーは高収入が期待できる仕事だが、まだまだハードルがある。2022年には無声騎士の言葉遣いが悪いという投稿がSNSに流れ波紋を呼んだ。手話には丁寧語や敬語がほとんどなく、教育を十分受けていない障害者も少なくない。趙さんは配達時にはジェスチャーを交えて丁寧にやり取りするよう心がけている。趙さんは聴覚障害のある妻と3人の娘、そして妻の両親を養っており、自身の過去の経験から家族を幸せにしたいと思っている。障害を乗り越えて自らの夢を叶えるため、趙さんは今日も走り続ける。