ミラノ・コルティナ五輪まで約1年となった去年3月、平野歩夢は海外の試合の合間を縫って帰国していた。幼い頃から指導を受ける父・英功さん、選手でもある弟・海祝と合宿を行うためだった。世界選手権が数日後に迫る中、5年間成功していない技「スイッチバックサイド1260」の習得に取り組んだ。平野は通常は利き足の右足を前にするが、この技は反対に左足を前にして助走し、進行方向と反対の左に3回転半する。難度の高い技が加われば演技構成の幅が増えて高得点が期待できる。いつも逆の足で踏み切るため、空中でのバランスが崩れてしまう。苦手な技の克服に乗り出した背景には競技レベルの進化がある。前回の北京オリンピックで縦に3回転・横に4回転する「トリプルコーク1440」を決めたのは平野ただ1人だった。昨シーズンに戸塚優斗がトリプルコーク1440に成功。さらに平野流佳は4回転の連続技に成功し、平野歩夢は勝てない日々が続いた。
