あさっては敬老の日。高齢化で増える認知症。東京都文京区の介護施設・文京小日向の家。ここで暮らす女性は認知症だが洗濯物を畳む役割を担い、職員との会話も弾む。入居した去年夏は食事も水分もとらず職員を困らせたがある取り組みで生活が落ち着いた。その取り組みは東京都認知症ケアプログラム。認知症の人の行動は問題とされ、行動そのものを変えさせようとしがちだが、背景には不安や困りごとなどがあると考え、それを取り除くことで改善を図る。その人の不安や興奮などの症状を数値化、背景を分析し対応を考える。東京都医学総合研究所が考案した質問に介護職員が日頃の観察をもとに入力すると総合点が出る。女性は去年7月には不安などの症状が32ポイントだったが耳の聞こえにくさに配慮してケアしたところ、ことし3月には3ポイントに改善。8月、再び14ポイントに。背景として新しい職員が来たことや戦争の報道が多いことなどが推測された。東京都が2018年に普及を始めた「認知症ケアプログラム」。小池知事は「1人1人のニーズにあわせたケアを行う国際的にも貴重なプログラムだ」と述べた。これまでの報告例ではデイサービスに通うAさんは自分用の送迎車が待ちきれず別の車に乗ろうとした。職員は取り残される不安があるのではと考えほかの利用者と一緒に待つことにしたところ行動は解消。Bさんはデイケアサービスでの食事や入浴を「お金がないから」と拒んでいたが「お金のやり取りが目に見えず不安なのでは」と考えBさん専用の食事券などを作って渡すと安心して利用するように。今年度こうしたプログラムは全国でも導入が始まり、条件を満たせば介護報酬が加算される。行動の背景にある困り事に寄り添う取り組みが広がっている。