この春、真打ちに昇進した落語家の雲龍亭雨花。江戸時代から伝わる古典落語に彼女独特の現代風アレンジを加え、高座では珍しいものまねも披露。レパートリーは100余りでSNSにもアップしている。さらには自作のフリップで江戸庶民の暮らしを描き「落語は難しい」というお客さんの声を受け知識や想像を手助けする。古典の表現力、オリジナルの芸風が人気となり真打ち昇進につながった。幼いころから落語にのめり込んでいった雨花は小学生のとき、すでに古典落語全集を読破。いつか落語家になりたいと周りの反対もあり一度はほかの道に進むが諦めきれず27歳のとき門をたたいた。彼女は入門時、3歳の息子がいるシングルマザーだった。子育てをしながらの前座修行という前例にない挑戦だった。ネタ帳には古典を中心に200余りの演目がびっしり。息子を保育園やベビーシッターに預け、朝から深夜まで落語に打ち込む生活。こうして育った息子の尊さんは今年大学3年生になった。母が稽古する声をずっとそばで聴き、修行時代のいちばんの応援者だった。さらに1年前、雨花は一般向けに落語教室を始めた。生徒は7人、働きながら落語を楽しむ人を応援し、一方、彼女も自身の芸に磨きをかけるうえで助けられているという。真打ちお披露目の初日。夢だった真打ちのみに任されるトリを務めた。厳しい雨にも負けず花を咲かせたいと挑んだ16年、初めての大舞台に立つ。真打ち昇進を祝福する声が飛び交うなか、この日に選んだ演目は「転宅」。泥棒に入られた女性が逆に泥棒を手玉に取る有名な古典落語だが、ここにアニメのキャラクターが登場。したたかにたくましく生きる姿を笑いで表現した。雨花の真打ち昇進襲名披露はことしの8月にかけて行われる予定だ。