「1月24日付の日本経済新聞夕刊」の公的年金金額1.9%増の記事について日本経済新聞・柳瀬和央氏が解説。柳瀬氏は「公的年金の支給額は経済の状況を踏まえた調整を目的に毎年4月に改定されている。この見直しはあらかじめ定められたルールに基づいて行われているが、この結果、2025年度の支給額は24年度に比べて1.9%引き上げられるということになった。国民年金は月額ベースの満額で1308円増えて6万9308円、厚生年金の場合は夫婦2人のモデル世帯で4412円増え23万2784円」と話した。結論から言うと年金は目減りする。このからくりを理解するには仕組みを知る必要がある。年金額の改定ルールは経済状況を踏まえて毎年4月に調整され、3つの指標から算定:1・物価変動、2・賃金変動、3・少子高齢化の状況。物価の上昇と同じくらい年金を引き上げないのか。1.現役世代の名目手取り賃金は↑2.3%(直近3年平均)、消費者物価↑2.7%(2024年)で賃金の伸びが物価の伸びに追いついていない。現役世代の負担能力に合わせて賃金変動を改定基準にしている。以前の年金改定ルールでは賃金より物価の変動を重視。この仕組みは年金の価値を維持し高齢者の生活も守るが年金財政が悪化。現役世代の負担能力を重視する改定をするために2021年度からは物価より賃金の動きを重視するようになった。3.少子高齢化の状況。現役世代から集めた保険料を基に年金を配る仕組み。少子高齢化で現役世代が減り高齢者が増えると年金財政が悪化。少子高齢化の進展に応じて年金額を抑えるマクロ経済スライドで調整。2025年度は現役世代の減少率や平均余命の伸び率から0.4%の調整率。賃金上昇率2.3%から調整率0.4%を差し引くと1.9%増となる。マクロ経済スライドは少子高齢化で重くなる現役世代の負担を引退世代にも分かち合ってもらう考え方。年金額の改定において賃金を重視するルールは年金制度の健全性を保つ上で必要。しかし、今のような状況が続くと実質的な年金の価値が目減りし高齢者の生活が厳しくなる。柳瀬氏は「賃金が年金に密接に関係している。年金生活者を守るためにも賃上げが重要になってくる。高齢者が人口の3割を占めている日本。年金財政の悪化を防ぎながら経済の好循環を実現する視点からも賃上げが大きなカギを握る」などと述べた。(日本経済新聞)