国の特別天然記念物・タンチョウは人による乱獲などで一時、絶滅したと思われていたが、約100年前に再発見。地域住民の手厚い保護が始まり、約2000羽まで増えた。タンチョウはエサが少なくなる冬場、釧路湿原の給仕場で人がエサを与えることで数を増やした。しかし給仕場に集中して感染症が発生すると一気に個体数が減る恐れがあり、10年ほど前から環境省が釧路周辺から分散させる対策を行ってきた。タンチョウ保護研究グループ・百瀬邦和理事長は毎年、1月から2月にかけて道東にある給仕場を中心にタンチョウの生息数調査を行っている。「大きな給仕場でのタンチョウの数がだんだん少なくなっていって、冬の分散が進んでいると確実に言えると思います。少数が広い範囲に分散する形になっていると思います」とコメント。環境省は2015年から、給仕場のエサを減らしはじめ今は4割程度になった。給仕場での密集を防ぎ分散化を促すため。ことしの調査では、自然環境での越冬数が日高・十勝地方で過去最高になった。夏場に道北や道央で繁殖する個体もここ数年増加しているという。分散化が進む一方で、課題も残されている。タンチョウがエサを求めて牛舎に侵入し、そのストレスから牛の搾乳量が減るなどの被害が出ている。中標津町の牧場では、春先になると植えたばかりの種を食べられる被害が出ている。百瀬邦和理事長は農家への聞き取りを行い、鳥が嫌がる餌をまくなどしてタンチョウが寄り付かなくなる効果があるか検証を進めている。