女子中距離のエース・田中希実選手。東京五輪に続いて1500mと5000mに出場していずれも入賞を目指している。田中選手は「みんなで喜べるあの瞬間、心から自分が笑える瞬間がもう一回パリでできたらいい」と語った。あの瞬間とは、3年前の東京五輪。女子1500mで、日本選手初となる8位入賞を果たした。しかし、その後の道のりは決して平たんではなかった。世界選手権の1500mでは、2年連続で決勝進出を逃した。一方で、国内のレースでは勝って当たり前。さらなる結果を追い求める中、純粋に走ることを楽しめず、もがき苦しんできた。刺激となったのが、長距離王国・ケニアでの合宿。走るのは舗装されていない地面。練習からレベルの高いランナーたちとしのぎを削る日々が、原点を思い出させてくれた。世界で再び勝負するため、自身の走りを改善できないか模索。運動機能の専門家と共に分析しているのは、足の運びやストライド。理想は、意識しなくても効率よく力を出せるフォームで走り切ること。フォームに手応えをつかんだのが、先月の日本選手権の1500m決勝。日本記録に2秒余りに迫る好タイムで五輪への弾みをつけた。1500mと5000mの2種目での入賞を目指す田中選手は、パリ五輪では困難さえも味わいながら思いをかみしめる。田中選手は「期間中、苦しんだりしても、それも本当の意味では幸せ。出れるからこその幸せをどんな意味合いでも感じたい」と語った。田中選手が出場する女子5000mは現地時間の来月2日、1500mは6日にそれぞれ予選が行われる。