今週は、これまで放送したものの中から反響の大きかった企画を選んで放送する。今、介護事業者の倒産が相次いでいる。東京商工リサーチによると、ことし1月〜11月の倒産件数は155件と、現時点ですでに過去最多となっている。深刻な人手不足や光熱費などの高騰に加えて、介護の現場からは介護報酬の改定の影響を懸念する声も上がっている。都内の訪問介護の現場を紹介。この日、訪問介護のヘルパーが訪れたのは80代女性の自宅。認知症だが、1人で暮らしている。デイサービスの迎えが来るまでに、着替えや洗濯物の取り込み、片づけなど、日常生活のサポートを行う。この介護事業所では、20軒ほどの利用者の自宅を回り、訪問介護を続けている。今、経営に影響を及ぼしているのが、ことし2%程度引き下げとなった訪問介護の基本報酬。訪問介護には、サービス付き高齢者向け住宅などの集合住宅内で行うものと、1軒1軒自宅を訪問するものがある。サービス付き高齢者向け住宅などは全体の利益率を押し上げているが、1軒1軒回る訪問介護では、移動や待機の時間がかかるため効率的に働くことが難しく、利益率が低いのが実情。経営環境が違っても同じ訪問介護と位置づけられ、基本報酬が引き下げられた。この事業所では、売り上げの80%以上を人件費に回さざるを得ない状況。介護事業所代表・辻本きく夫さんは「私の給料は月に8万円くらい。給料をちゃんと出したら当然赤字になってしまう。経営者がそんなに給料を取らないで回している事業所なんかいくらでもある」と話す。来年、75歳になる辻本さんは、自身の高齢化を理由に利用者を受け継いでくれる事業者を見つけ、ことし6月いっぱいで閉めようと考えていた。しかし今も見つからず、事業を続けざるを得ない状況。こうした状況について、淑徳大学総合福祉学部・結城康博教授は「地域型の小規模事業所というのは経営者のやりがい、社会的責任感で事業運営していた。収支が黒字化できるような施策に転じないと地域型の訪問介護事業所は少なくなってしまう」と述べた。こうした事業所の厳しい経営状況について、厚生労働省は今回の報酬引き下げがどのような影響を与えているか、9月から調査を始めていて、現場の状況を把握・分析していきたいとしていて、来年3月までにまとめるとしている。