「孤独者のすまい」と題された絵は画家の自画像とも言われている。山口薫は詩魂の画家と呼ばれた。1907年、群馬県箕輪村生まれ。中学生時代の絵日記からはその才能が天性のものだったことが伺える。17歳で東京美術学校西洋画科に入学。2先生の時には学費免除の特待生に選ばれたほど成績優秀で帝展にも入選。卒業後フランスに留学。マティスやモディリアーニから多大な影響を受け、3年後帰国。仲間たちと新時代洋画展を結成、模索の日々が続いた。28歳で結婚するも短期間で破局、神経衰弱となり半年ほど群馬で静養。それを機に画風は一変。自己の進むべき道を見出した。山口はクマと名付けた甲斐犬を飼っており、クマをモデルにした水彩画をいくつか残している。絶筆「おぼろ月に輪舞する子供達」。享年60。依頼品の水彩画は、青空が広がる海辺に10匹の蝶が飛んでいる。よく見ると右下に”かくて 人 去りぬ”と書かれている。ビーチにはヒトデや脱ぎ捨てられたサンダルも。果たして鑑定やいかに?