企業が社員に研修を行う際、座学では伝えるのが難しい作業などをVR(バーチャルリアリティー)で体験してもらおうという取り組みを取材した。大手警備会社が社内研修で取り入れているVRは、警備で巡回するオフィスビルなどをもとに360度の映像を用意した。点検するべきポイントを所定の時間内に漏れなく探せるかを試す。忘れ物や不審なものを発見する力も養うことができる。点検するべきポイントをいくつ見逃したのか確認することができ、理解が不足している部分が分かるという。一方、VRを活用して社員の安全意識の向上につなげようという取り組みもある。大手鉄道会社が行っているのは、脱線事故の現場を追体験する研修。10年前に回送列車と資材を運搬する作業車が衝突した事故では、安全管理に関する指示が不十分だったことなどから運転士と車掌がけがをし、ダイヤにも乱れが出た。会社は現場にいた従業員の証言をもとに、事故が起きるまでの状況を再現した。当時、現場には作業車を誘導する責任者がいた。VRではその責任者などの視点に立って、現場の様子をよりリアルに感じることができる。鉄道会社によると、脱線事故のあとに入社してきた社員も多いということで、事故の教訓を引き継いでいくという意味でもVRを使った研修は有効だという。