横浜在住の山口さん夫妻は、新幹線と車で5時間近くかけて山口県光市に通い、文化財を保護している。文化財は、長州藩志士で教育者の難波覃庵が屋敷の蔵に開設した私設図書館「向山文庫」。長州藩に関する書物や古文書のほか、難波覃庵自身が集めた本も多数所蔵されていて、当時は貸し出しも行っていたという。大久保利通が西郷隆盛にあてた手紙が出てきたこともあり、倒幕に向けた薩長同盟の成立を後押ししたことがうかがえる貴重な史料とされている。難波覃庵は、屋敷内で私塾も開いていて、当時は藩士としての教育も行っていた。昭和初期、向山文庫は図書館としての役目を終え、忘れ去られていたが、歴史好きの山口さんは自らのルーツを探る旅で、祖先である難波覃庵が作った向山文庫を訪れた。難波覃庵の活動に感銘を受け、文庫を受け継ぐことを決意し、3年前に親戚から譲り受けた。建物は傾いていて、倒壊の危険があった。向山文庫は未指定の文化財のため、補助金などは一切出ず、修繕費は山口さんが賄わなければならなかった。