NATOを巡っては、GDPの5%まで国防費を高めることをアメリカが求めている。実際は勇二に備えたインフラ整備やサイバー攻撃対策の費用1.5%も含まれている。NATOの目標はこれまで2%だったが、国によって動きは異なりポーランドでは既に4%を超える国防費が捻出され、バルト3国も防衛費を増加させている。ドイツも2029年までに3.5%まで引き上げるとしている。これに対しイタリアやスペインは国防費の捻出に消極的でロシアに近い国とそうではない国で危機感の違いがあることが理由と見られる。スペインは1.28%でこれを2.1%まで引き上げる方針としているが、トランプ大統領は不満を示している。NATO首脳会議では集団防衛体制に対する揺るぎない意志を再確認すると宣言したものの、ウクライナ情勢を巡ってはトランプ大統領に配慮して議題とならず、ルッテ事務総長に対してもトランプ大統領に媚びているとの指摘がある。ウクライナへの支援はアメリカのものが1141.5億ユーロと、欧州全体の1323億ユーロに肉薄し軍事支援に限れば欧州を超える様子も見られる。トランプ大統領は対中関係を警戒する一方で、ウクライナ問題ではロシアに融和的な姿勢を見せる形となっている。ヨーロッパ側もアメリカに依存し続けるのではなく、NATOの枠組みとは別の戦略的自律を推進している。欧州委員会は欧州防衛白書を今年3月に発表し、加盟国への連帯や防衛への投資を呼びかけている。ドイツのメルツ首相は自立した防衛政策を掲げ、フランスのマクロン大統領はフランス版核の傘を提唱しているが、こちらを巡っても結束は見られない。EU首脳会議ではウクライナ支援を巡りロシアと親密なオルバン首相のハンガリーが反対したことで全会一致とならないなどし、フランスやドイツでもポピュリズム・極右政党が拡大する様子が見られる。解説者の二村伸さんはEUは27か国に拡大する中各国の思惑の中で求心力が低下しているのが現状であり、アメリカに依存しつつ自立を目指す矛盾のある試みがうまくいくかが課題となるとまとめている。
URL: http://ec.europa.eu/