北海道・日高・浦河町にあるJRAの育成牧場で働く装てい師・橋本孟佳さんは、てい鉄の作成やひづめの削てい作業に当たっている。競走馬のパフォーマンスを引き出すために重要な足元のケアを担っている。橋本さんは現在、装てい師の負担軽減のための研究を進めている。新たな手法での治療用のてい鉄を作成することだ。てい鉄は蹄の病気への対応などにも使われるが、症状の変化に応じて形状を変更したり、治療に遅れが出ないようにストックを用意することが必要で負担となっていた。そこで3Dプリンターで治療用のてい鉄作りに挑戦している。情報を3Dプリンターに送ると、早いもので数時間程度で樹脂製のてい鉄が完成する。3Dプリンターで作ればそれぞれの馬に合わせたてい鉄ができるだけでなく、一度設計すれば治療の進ちょく状況に応じて素早く調整することができ、コストの削減にもつながると期待されている。橋本さんは「自由度が高い設計ができるので1個作ったら角度を減らしたものを設計さえして印刷しておけばその馬の治療段階に応じたものを取り外しが簡便にできるメリットがある」と話した。実際に使用も始まっている。成育に影響が出る恐れのある馬に3Dプリンターで作ったてい鉄で矯正を行ったところ、症状が改善した。課題と向き合いながら徐々に手ごたえを感じている橋本さん。将来的には馬産地を支える技術にしたいと意気込んでいる。