自身2度目の9秒台で100mの代表となった桐生祥秀。今夜いよいよ100m予選に挑む。しかし、壮絶な陸上人生を歩んでいた。初めて脚光を浴びたのは17歳の時で、叩き出したタイムは、当時日本現役最速となる10秒01。この瞬間から日本人初9秒台の夢を一身に背負う存在に。しかしその期待は高校生の桐生にとって重圧となってのしかかった。桐生の出るレースにはメディアが殺到。大会新記録で駆け抜けてもスタンドからはため息が聞こえるように。9秒台の十字架は17歳の心を深く抉ることになった。19歳の時、国が難病に指定する「潰瘍性大腸炎」を患った。完治が難しい原因不明の病だった。体を蝕む病は心にまで影響を及ぼした。陸上は仕事と割り切ることで皮肉にも症状は改善していき、2017年に症状は収まった。そして日本インカレにて9秒台に到達した。しかし、周囲の盛り上がりに反して陸上に対する思いは薄れていき走る理由を見失っていた。26歳の時、約4か月休養を取ることで心にある変化が芽生え、桐生の新たな陸上人生が幕を開けた。