日本酒の味わいを見える化することで、市場の拡大につなげようという取り組みを取材した。創業195年目を迎えた秋田の酒造会社では、地元のコメを使い20種類の日本酒を製造しているが、杜氏が作り上げてきたそれぞれの酒の味わいを消費者にどう伝えるか、課題があった。こうした中、今月発売した日本酒に取り入れたのが、味わいを示したチャート。甘さや酸味、余韻など5種類の味わいを五角形で表示した。チャートを見た人にアンケートを取ったところ、「未体験の日本酒を選ぶ際に役立つ」と回答した人が9割に上った。会社は手応えを感じている。味わいのチャートを作ったのは、大手電子部品メーカー。プロジェクトを立ち上げた兼森庸充さんは、10年前に秋田の工場に出向した際に地元の日本酒に出会い、おいしさに魅了された。日本酒の魅力を多くの人に伝えるため、会社の技術を役立てられないかと考えた。電子部品メーカーではこれまで、自動車やスマホ向けの部品を分析する際に、素材の成分を分離する技術を用いてきた。それを日本酒の成分の分析に応用した。秋田での縁がきっかけで生まれた、日本酒の味の見える化。兼森さんは、ほかの酒造会社にも普及させていきたいと考えている。この電子部品メーカーはさまざまな味を数値化して記録できるため、伝統の味を守ることにも役立つのではないかと話していた。