国内の製薬会社は約330社でそのうちジェネリックが約180社を占める。大手は数社でそれ以外は多くの中小メーカーによって成り立っている。石川県に工場を構える辰巳化学の売上高は116億円でジェネリック業界では中堅企業の1つである。工場長の中岡健司さんはこの仕事に携わって30年以上の大ベテランである。その中岡さんの案内で製造エリアへ。取り扱う薬の品目は大手の沢井が800なのに対し、辰巳は300である。製造ラインの稼働状況を表すランプが青から赤へと変わった。従業員が手にしているのは薬の名前が書かれた紙でこれまで作っていた睡眠導入剤から利尿剤へと変わった。ジェネリックの工場では1つの製造ラインで様々な種類の薬を作っている。辰巳の場合は製造ラインは全部で9つであり、300もの薬を製造するために1つのラインで何種類も作っている。そのたびに形替えと呼ばれる部品交換が必要となりこの作業の間は製造ラインはストップして薬を作ることはできない。さらに部品交換のあとは残留物がないか時間をかけ隅々までチェックしていく。形替えに取り掛かってから3時間半、ようやく製造再開かと思いきやできあがった製品を回収していく。そして抜き取ったものを5人がかりでくまなくチェックし始めた。次の薬の製造が始まったのは4時間後。これが1つのラインで1日2回ある時も。こうして様々な薬を少しずつ製造することを少量他品目生産という。この効率の悪さが薬を増産できない大きな壁となっていた。しかし少量他品目生産にならざるを得ない理由があり薬価という薬の価格である。この薬価は国が決めジェネリックの場合は先発薬のおよそ半額から始まり、基本的には下がる仕組みで5年間は同じ薬を作り続けなければならない。そこで利益率が高い新製品に次々と手を広げるのである。取材中、案内してくれていた担当者に緊急連絡が入り、それは大きな損失につながりかねないトラブルであった。
