台湾総統選挙で与党民進党の頼清徳氏が当選した。中国に厳しい態度で臨み、アメリカや日本との連携を重視してきた蔡英文総統の路線が継続する。頼氏は5月に正式に就任する見通し。同一政党が3期連続で政権を担うのは初めて。現地の新聞各紙は政権が2期8年ごとに交代してきたことを踏まえ「8年の呪縛を打ち破った」と伝えた。また対中強硬路線を貫く頼氏の勝利について「中国の占拠介入は失敗した」と強調した。しかし頼氏の得票率は4割に留まった他、同時に実施された議会占拠では対中融和的な国民党の議席数が民進党を上回り、新興勢力の民衆党が議会のキャスティングボードを握る形になり、圧倒的な勝利とは言えない結果となった。アメリカバイデン大統領は「一つの中国対策をとる立場から台湾の独立を支持しない」と語った。一方、台湾を自国の一部とする中国はアメリカの祝意を内政干渉だと非難。「台湾内の情勢がどう変わろうが中国の一部という基本事実は変わらない」とする談話を発表した。台湾は輸出入ともに中国が最大の貿易相手国で、去年は全体に占める割合は輸出35%、輸入20%だった。中国も半導体の多くを台湾に頼るなど経済の相互依存は強いものの規模では中国が圧倒。中国は台湾から輸入する繊維原料など12品目についてECFAに基づく関税優遇を停止。総統戦を前に民進党に揺さぶりをかけた。中国が敵視する頼氏の当選によって関税優遇をやめる対象品目が拡大すれば台湾企業への影響が深刻化する可能性もある。頼氏とともに当選した蕭美琴次期副総統は、日本の神戸市で台湾人の父とアメリカ人の母との間に生まれた。2020年に女性初の駐米代表に就任し、今回の選挙に伴い副総統候補に抜擢された。他国に対する恫喝など攻撃的な中国の「戦狼外交」に対し、蕭氏は自身をネコになぞらえ、張り詰めたロープの上を機敏でしなやかに動く外交姿勢を掲げる。米中デカップリングに翻弄されやすい台湾をバランスが外交でどのように導いていくのか。