23年前、正倉院の許可のもと、蘭奢待の化学成分を分析した結果が記された論文があり、検出されたクロモン類という化合物は伽羅に特有の成分。蘭奢待は伽羅に分類されるといえる。また、文献を渉猟すると、蘭奢待を聞いた時、はじめに杏仁の香りがするという。今回、貴重な伽羅の1つで初音と名付けられた香木から杏仁の香りを抽出し、蘭奢待を聞いた時の感覚に近い香りの再現に取り組んだ。山田大樹アナウンサーは試しに嗅がせてもらったところ、杏仁豆腐よりも複雑で、どこか上品さを感じさせる香りがしたという。菅原俊二氏は「あくまで杏仁が際立つ構成になっていて、蘭奢待の一部なのかもしれない」と語った。志野流の継承者、蜂谷宗苾氏は新型コロナ感染症の終息を願い、増上寺で蘭奢待の一部を焚き、献上している。足利義政、織田信長、明治天皇と同じ香りを聞いたが、言語化は難しいという。