慶應義塾大学病院では、若手の医師がベテランのサポートを受けながら内視鏡による胃がんの検査を行っている。胃がんは早期に発見できれば9割以上が完治する病気で、そのカギを握るのが内視鏡。しかし内視鏡による診断は精密な操作と高度な技術が求められ、一人前になるまでに10年以上かかるとされている。そうした中、この春に導入されたのが胃がんの発見をサポートするAI。医師が一生で出会う約3倍のデータを学習していおり、瞬時に胃がんの疑いのある箇所を発見できるのだ。開発したのは現役医師の多田智裕さん。多田さんは「1人で“がんの見逃しをしないように”と緊張感の中でやるよりも、人が一生かかっても覚えられないようなデータ量を覚えた優秀なアシスタントと一緒に検査をした方が安心感がありますし、より確信をもって診断ができるようになる」と語る。しかし、AIの診断は完璧ではなく、表面を綺麗に洗う、胃をどのくらい膨らませるかといった設定・条件を、しっかり人間の手でやっていく必要があるという。最終的な診断を下すのは医師だ。日本では、もしAIを使って見落としが起きた場合、AIを使用したドクターの責任になることが明記されている。医師にとってAIの位置付けは「参考」なのだという。