東京・葛飾区にある町工場で極細の輪ゴムを作った平井秀明さんは2015年に3代目として後を継いだ。ゴムや樹脂などの型抜き加工が専門で家電などに使われる部品を作っているが、平井さんが継いだ当時は売り上げが減少して倒産寸前の状態だったそう。そこで経営を立て直すために取り組んだのが極細の輪ゴムを作ることで、完成した0.3ミリの輪ゴムは2016年に製品化された。その後極細の輪ゴムを展示会やメディアで紹介して技術をアピールしたが、注文はマジックで使いたいとのマジシャンから1件のみだったそう。しかし開発から3年、消化器内科医の松尾さんが極細輪ゴムを取り上げたラジオを聞いて大腸ポリープの切除に使えないかと考えたそう。そして大腸ポリープ切除の新たな選択肢を作るために町工場と医師の挑戦が始まった。開発の過程では治療に耐えられる強度と伸びる性能を確保するために太さや形の検討を重ねるなど様々な苦労があったそう。松尾さんから連絡があった日からおよそ5年、ついに完成し去年10月には大腸ポリープを切除する医療機器として保険診療での利用が可能になった。平井さんは最初の想定もしていなかったが、作った医療機器で人命が救われれば幸いなどと話した。