認知症の高齢者の数について、きょう、厚生労働省の研究班が新たな推計をまとめた。来年は471万6000人。これが2040年には、584万2000人になって約113万人増える。2040年は団塊ジュニアが65歳以上になる時期で、高齢者の6人から7人に1人が認知症と推計されている。2年前に認知症と診断された、86歳の女性。物忘れのほか、理解力や判断力の低下などの症状がある。女性は、週に2回、デイサービスを利用しながら、50年以上過ごしてきた自宅で1人で暮らしている。女性には、離れて暮らす50代の長女がいる。長女は週に2回、仕事が休みの日に母親の様子を見に来ている。訪ねられない日も、朝昼晩の3回、通勤途中などに電話をかけ、ごはんを食べたかどうかや、薬を飲み忘れていないかなど確認するようにしている。最近は、母親から娘であると認識されないこともあるという。自宅での生活をできるかぎり続けさせてあげたいと考えているが、症状が進行した場合を考えると結論が出せないという。きょう公表された認知症の高齢者数。全国4つの自治体の高齢者について、認知症の診断を行い、それぞれの自治体の有病率から推計された。今回の結果を受けて、専門家は、特に1人暮らしの認知症の人への支援が今後の課題になると指摘。東洋大学・高野龍昭教授は「寿命が伸びれば認知症になる人も増える。認知症で老後1人暮らしをする人が間違いなく増えていく。サポートを整備や施策、専門職の力だけで支えていくのも不可能になる。行政や専門的団体が市民の力を借りられるような仕組みを公的な力でつくる。一般の人たちが一緒になって、地域の中で認知症の人たちを支える仕組みを作っていくことが重要になっていく」と語った。福岡・行橋市のスーパーでは、1人暮らしの高齢者や認知症の方など、地域の方を支える取り組みが行われている。スローレジは、高齢者や認知症の人、体の不自由な人などに向けて、会計に時間がかかることを心配しないでほしいと設置。レジには、認知症の知識を学んだ店員を配置。レジは誰でも利用でき、会計に戸惑ったり、袋詰めが難しかったりする客のサポートもする。導入の背景には、認知症の人の中には1人で買い物をすることを不安に感じている人も多いという声を聞いたことがあった。現在、約60の店舗に広げている。スーパー・安藤康太店長は「付き添いが必要だったお客様が、1人で買い物に来られるようになった喜びの声もあった。地域に寄り添っていきたい」と語った。認知症の人を支える新たな取り組みを始めようとしている自治体もある。埼玉・さいたま市では、全国に1500万人以上いる認知症サポーターと呼ばれる人たちの存在に着目。自治体などの講習を受けて、認知症に関する知識を身につければ、誰でもなることができるが、活動の場が限られている現状もあると指摘されている。さいたま市が準備を始めているのが、認知症フレンドリーまちづくりセンターの開設。認知症の人たちが参加している地域の集まりなどをサポーターに紹介し、一緒に過ごせる機会や場所を増やす。どのような支援ができるかを一緒に考え、サポーターが自発的に支援していく仕組みを目指す。さいたま市いきき長寿推進課・松尾真二係長は「認知症の人がやってみたいこととサポーターの活動をマッチングしていければ」と語った。